繊細さと敏感さはわがままなのか?(あるいは敏感さのハック)

「お気持ち自警団考」というタイトルで、こんな記事を書いた。
Twitterの有名人「白饅頭」こと御田寺圭氏の著書「矛盾社会序説」(イースト・プレス)を読んだ。 就職氷河期世代の非正規雇用者や容姿が劣...
自警行為の背景にあるのが攻撃性だけではなく、痛みに対する敏感さと、過去に自分の属性を殴られた経験であるならば、その生き辛さには敬意を払いたい。
その上で、僕は「感情を道具にした論法は周囲の人間も自分自身も不幸にする」と言いたい。
というような内容
 

闘争の場の力学

偉大な哲学者であるアルトュール・ショーペンハウアーは、世界を「意思と意思の闘争の場」であると捉えた。
彼が語る「意思」は通常我々が使うよりも広く複雑な概念だが、「wille」(英語のwill)という日常的に使う「意思」と同じ言葉を用いている。
まとめサイトを見ていたら、以下の記事について取り上げているスレッドをまとめた記事があった。リンク:NEWSポストセブン 経済的に大変、自信がない…子供がいらない理由の本音記事は「親になる自信がない」「経済的に余裕がない」「仕事との両立が困難」などの理由で、
ショーペンハウアーと比べると単純な思想なのだが、僕は人間の世界が意思の闘争の場になる一因は、

人間が持つ、自分に無い「繊細さ」や「敏感さ」は単なる他者のわがままであると感じる性質

にあると考えている。

ある人にとってはどうでもいいが、別の人には気になって仕方がないことがある。
・他人の咀嚼音が気になる
・他人の独り言が気になる
・他人の咳やくしゃみが気になる
・広く受け入れられている食べ物が苦手である(野菜、生肉、生魚等)
・自分よりアウトプットが少ない人間と給料が変わらないのが我慢できない
・自分より働かない人間が年次だけで偉そうにするのが我慢できない
・電話がいきなり鳴るのが苦手である
・自慢やマウンティングが許せない
・自虐や自嘲が許せない
・満員電車が辛い
・満員電車を避けるために7時台に家を出るように起きるのが辛い
・生まれた子供が苦しむことを考えると子供を作れない
・風邪やインフルエンザで熱が高くなりやすく、耐え難い喉の痛みに見舞われる
・胃が痛みやすく、食事が苦痛である
 
軽く流せる人がいれば、それが生き方に影響する人がいる。
そして、軽く流せる人から見れば、自分が該当しない敏感さを持った人間は、些細なことを気にする弱者や、不合理な行動をする愚者に見えるだろう。
これは、種族の致命的なバグというよりは、群れで活動し有限のリソースを分配して生きるためのハウツーだったのだと思う。
 

個体差のばらつき

人には個体差がある。
それは生物学的な要因に還元できるものもある。
セロトニントランスポーター遺伝子の型で楽観的か悲観的かに差が出る。
女性は出産後にオキシトシンが分泌されるので、子供に対する感じ方は男女で異なる。
また、必ずしも生物学的な裏付けがなくても統計的に見出されてきた傾向がある。
例えば、刺激に敏感な人間は政治的にも保守的になる。

また、生得的なバラツキが、各個体の経験により増幅されたり緩和される
家族や人との出会いは人によってバラバラだし、努力の報われ方も様々だ。
不幸のくじ引きによって割り振られた属性を、拡張するか無効化しようと時間を費やすのが人生だ。

人生は、決断の連続だ。 作為と不作為を合わせると、人間は日々、多くの決断をしている。 たとえドラマチックでなくても、僕たちの人生は多くの...

「繊細さ」「敏感さ」というカードは、望んで手に入れるわけでは無い割に、生き辛さをもたらす属性だ。

 

個体差のバラツキに対処するのがハック

ADHDを公言するアルファ・ツイッタラーの借金玉は、著書の『発達障害の僕が「食える人」に変わったすごい仕事術』(KADOKAWA)を、普通ではなくても生きていくための「ライフハック」として執筆した。
 

 
ここで言うハックは、物を無くしやすい人は一覧性の高い開くカバンに全部入れるといったフィジカルなものだけでなく、「お礼」「挨拶」「面子」は「見えない通貨の支払い」なので軽視しないというような思考面のものも含まれる。

僕自身は敏感で共感性が暴走しがちなHSP気質で、著者とは真逆な所が多い人間だ。
だが、借金玉本の「自分が持っているバラツキをツールを使ったり背景を理解することでハックする」という姿勢は参考になった。

彼の「ライフハック」という言葉の使い方は、率直に言って「うまいなぁ」と感じた。
僕は、働いたり生きるのが辛くなってから、人間に共通する非合理性や、逆に人間の中にある個体差に強く興味を持つようになった。
特に、進化心理学、社会心理学、精神医学、脳科学といった分野は、僕の関心にそれなりの回答を与えてくれた。
僕が求めていたのも、生きていて「痛み」「疲れ」「悲しみ」を感じやすい自分が、人間の平均とバラツキの傾向を知り、自分の持つバラツキに対処するためのライフハックだったのだと思う。
 

「敏感な人」向けのライフハックは「鈍感な世界に生きる敏感な人びと」(イルセ・サン、ディスカヴァー・トゥエンティワン)のような、HSPに関する著書が大変参考になると思う。

昨年の末くらいにデンマークの心理療法士が書いた『鈍感な世界に生きる敏感な人たち』(著者:イルセ・サン、邦訳:枇谷玲子、出版:ディスカヴァー・トゥエンティワン)という本を読んだ。HSP(Highly Sensitive Person、非常に敏感な人)という概念について説明して、HSPの
最後に僕から、「敏感な人」と「敏感な分野が理解されにくい人」向けに、善良な本には書いていないハックをご紹介する。
自分の「痛み」を理由に他人を変えようとしないこと。
人間は自分が該当しない分野の「繊細さ」や「敏感さ」は単なる他者のわがままであると感じる。
「痛み」や「不快」を退けるために取った行動が、他人の敏感な所に触れ、攻撃されたと考えて反撃を受ける。
相手が反撃できない立場の人間ならば、他人の「痛み」や「不快」を理由に行動を制限されることは大きなストレスだ。
そこは新しい闘争の場になる。
 
 

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