「あなたの飲酒をコントロールする」の感想・依存度が高い人には断酒が必要

「あなたの飲酒をコントロールする」(著者:ウィリアム・R・ミラー, リカルド・F・ミューノス ,翻訳:齋藤 利和、出版:金剛出版)を読んだ。

2019年に邦訳が出版された問題飲酒者向けの自助本である。
原著の初版は1976年に出版されたかなり歴史のある本だが、本書は2013年に大改訂した第2版を底本にしている。
著者筆頭のミラー教授「動機付け面接」(MI, Motivational Interview)の創始者と言われている。
依存症治療では「断酒」をすすめるものがほとんどだが、依存度が比較的軽度の多量飲酒者には「減酒」を提案し、減酒のためのアプローチを紹介しているのが本書の特徴だ。
 

あなたは減酒できる人か、断酒が必要な人か?

本書では、アルコールへの依存度の指標として2つのテストをまず行う。
それぞれミシガン・アルコール症スクリーニングテスト(MAST)アルコール依存スケール(ADS)というテストだ。
どちらも以前に当ブログで紹介した久里浜式アルコール症スクリーニングテスト(KAST)のように、飲酒のコントロール不全、飲酒によるトラブル、身体や精神への影響をスコアリングするテストだ。

久里浜式アルコール症スクリーニングテストについてはこちら

TOKIOの山口メンバーの事件で、彼が「アルコール依存症」だったと報道されている。 僕も以前、アル中みたいな生活をしていた時期がある。 ...

本書の肝になる部分は、著者達の追跡調査によると、両テストの点数(=依存度合い)と減酒の可否には明確に相関があったということだ。
MAST、ADSともに、依存度合いが高い患者たちほど問題飲酒の克服に断酒が必要であり、軽度の患者の方が減酒によって酒量をコントロールすることが可能な人が多かった。
「依存度が高いほうが途中でやめられない」というしごく納得感のある結果なのだが、実際にそうなのだ。
自分の点数は、MASTが24点、ADSが21点だった。これは「中程度」と「かなり重度」の狭間に当たるような点数だ。
この状態だと、減酒ではなく断酒のほうが成功する人が多い。
例えば、MASTが自分の点数のグループでは、減酒を維持できる人はわずか1/12にすぎず、問題飲酒を克服した患者のほとんどが完全断酒だったという。
ということで、冒頭の40ページで自分は減酒が困難なカテゴリーに属する人間だと分かってしまったのだった。
 

減酒のためのアプローチ

自分には減酒はあまり効果的ではないことは分かったが、それ以外の本書の内容は興味深かった。
本書の上述のスクリーニングテストに続く部分では、
・自分の飲酒量の把握
・飲酒スピードと血中アルコール濃度の把握
⇛飲酒の記録をつけることで飲むスピードと酒量を抑える
という減酒のための行動アプローチと、減酒中のモチベーションの維持につながる考え方が書かれている。
 

大量飲酒者の異常さ

上記の内容の中で、過量飲酒者として読んでいて非常に頭が痛かった「飲酒量」についてここで詳しく紹介する。
米国の国立アルコール乱用依存研究所の指標では、純アルコール12グラムを1飲酒単位とし、女性は1日に1飲酒単位、男性は1日に2飲酒単位を上限とするべきとしている。
(厚生労働省は1単位を純アルコール20グラム、WHOは1ドリンクを純アルコール10グラムとしているため、混在に注意する必要がある。)
計算方法は簡単で、
アルコール飲料の容積(ml)×度数(%)×0.8(水とエチルアルコールの比重,g/ml)
の単純なかけ算だ。
ストロングゼロのショート缶だと
350×0.09×0.8=25.2グラム
になる。
清酒1合だと
180×0.14×0.8=20.16グラム
である。
 
さて、何気なく書いたが、この2飲酒単位(アルコール24グラム)は酒飲みからするとかなり少ない
ストゼロの場合はショート缶一撃で上限を超えてしまう
自分は、これを1日に4本飲んでいた。純アルコール換算で100.8グラムである。
本書の統計に当てはめると、これだけ飲む人は、日本人100人中に2人しかいない。
(月一回以上飲む人で、1回あたり厚生労働省基準(20g)で4単位以上飲む人の割合)
トップクラスだが全然嬉しくない。
驚くべきは日本の成人男性の52%は、酒を飲まないか、飲んでも1飲酒単位未満の人たちなのだ。
ここまで読むと、過量飲酒は異常だという認識を自分も持つようになった。
 

本書の射程範囲と大量飲酒者が参考にすべき点

本書の「減酒」アプローチは依存度が高い人には効果はあまりない。
ただ、自分は酒に関する本は相応に読んだが、飲酒量(上述)や血中アルコール濃度の上昇スピードの把握のための知識は本書で初めて目にした。
情報として参考になるので、自分のような重篤なトラブルは起こしていないが予備軍にあたる過量飲酒者にもおすすめする。
 

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